あれは確か小学6年生だったと思う。
埼玉県の日高県道を、わが家からセブンイレブンに向かう時だった。
その当時は、まだセブンイレブンが文字通り午前7時から午後11時までの営業時間であったのだ。
わが家で遊んでいた友達が、『もうすぐ11時だからイレブン行こうぜ』と言った。
小学生であったにもかかわらず、ぼくたちは、自由に夜を徘徊していた。
お互いに祖父母に育てられていた家庭環境にあったから、その辺のガードが甘かったに違いない。
ぼくたちは、それぞれ自転車にのって、
ぼくが前を、友達がその後を、
つまり2台が縦に並んで、県道を走った。
時折、僕が後の友達に顔を向けながら、
耳にあたる風の音を聞きながら、大声で会話をしながら走った。
日頃、この県道は、薄暗い。
車の通りはあるものの、歩く人は、ほぼいなく、
たまに自転車に乗った大人とすれ違うほどだった。
その日も、いつもどおりだった。
イレブンまで、半分ほどのところで、
大きな光が、僕たちの後方から直進方向に向かって通り過ぎた。
それは、とてつもなく大きな光で、
ぼくらが空に顔を向けた時に見える視野よりも大きなものだった。
県道の脇に建ち並ぶ住居と電柱の影が、
自分たちの前方に堕ちたかと思うと、自分たちの足元をすべるように後に向かって通り過ぎて行った。
それはまるで、大きなサーチライトが、天井から照らして移動していくような光だった。
一度、昼が通り過ぎるような、明るすぎる光だった。そして、それは無音だった。
ちょうど後を向きながら会話していた僕らは、
すぐに前に向き直し、ただひたすらペダルをこいだ。
もちろん、会話はやめた。
それから、まもなく、イレブンに到着して、自転車にスタンドをかけて、降りた。
ぼくらには、間があった。
ぼくが、その間をやぶったのを憶えている。
『さっき、なんか上を通ったよね』
友達は言った。
『俺だけかと思った。よかった言ってくれて』
ぼくがしゃべらなければ、言わないつもりでいたらしい。
それぐらい、怖くて、不思議な体験だった。
イレブンの放つ光に、安堵に満ちたぼくらは、
イレブンの駐車場で、ざるそばを頬張った。