それは“あくび”がうつることだ。
目の前の人があくびをすると、こちらまでつられてあくびをしてしまう。
逆もしかりだ。
それは、きっと、空気の塊が、等高線のごとく空気中を分けていて、
酸素濃度の低いラインに、ひとたび足を踏み入れると、起こるようにも思える。
しかしだ、
空気感染的な気配をよそに、
感じてしまった事がある。
それは、“電話”だ
いまではめっきりと少なくなったであろう“長電話”で、
体験したことがあるのだ。
その昔かれこれ1時間以上話していた時だった
『ふわわ』とこちらが欠伸をすると、相手も続けてしたのである。
その時、空気の伝染だけではないなと、気がついてしまったのだ。
一体、なんなのだ。これは。
もしかすると、これは、個々の人間を繋いで渡るための“行為”なのではないだろうか。
あくびの瞬間、何かが、目にも留まらぬ早さで、びゅんと移動しているのではないか。
何が移動してるというのだ。
その昔、友達が、興味深いことを言うていた。
『原子って知ってるかい?』
『原子っていうのはね、この世で一番小さな物体で』
『全てのモノは、その原子とやらで出来ているらしい』
『そしてね、原子ってやつは、君という人間を作っていたり、その辺の花や野良猫、はたまたこの部屋にある机、花瓶、そういうものだったりする』
『そしてね、そのそれぞれは、その原子ってやつを交換してるらしいんだ』
『たとえば、君が毎日通勤している間に、道で出くわす、咲いている雑草や花、電車で会う人、ランチで食べるもの云々、キレイだな、美味しいなと意識した時、そのモノたちと原子を交換してるらしい』
『つまりさ、君というモノを作っている原子ははね、毎日、少しずつ君の中の原子が入れ替わっていて、1年後には、全く違う原子になってしまっているんだよ』
『すべてのモノは、ただの容器に過ぎないのかもしれないね』
というお話を思い出した。
あっ、そうか!
あくびは、原子を交換してるのかも知れないね。