鈴木正治とモード・ルイスに見るフォークアート_十和田市現代美術館来たら立ち寄りたいギャラリー・ノースライト
先日、十和田市に在住する小川さんのギャラリー・ノースライトにお邪魔し、 鈴木正治(すずきまさはる)というアーティストの作品を見せていただいた。
鈴木正治は、1919年青森県青森市に生まれ、そこで作品を作り続けた彫刻家だ。
青森の木や石を削り、絵も描いた。
作風は素朴。
木をくり抜いてお釈迦様の誕生を彫ったこちら↓の作品からもわかるように、素材の形をそのまま活かした作品が多い。
雪国がグラフィカルでモダンに
絵の作品も本当に可愛らしいものばかり。
グラフィカルな作風が多く、モダンで新しく感じる。
下は、北国の定番・角巻(かくまき)※を巻いた人物の墨絵で、掛け軸になっている。
この他にも、題材がねぶた祭りや、リンゴ、えんぶりなど、青森ならではのものがあるのが嬉しい。
他にも、貝殻や、石や、お菓子の空き箱に描かれた絵もあり、自身の身近なものを素材や題材にして作品を作り続けた作家なのだそう。
どれも、見ていると心が暖かくなり、気づくと夢中になっていた。
※角巻とは、大きな四角い毛布でできた肩掛け。東北地方の婦人防寒具でした。地吹雪ツアー等で着せられるあれです。
どうして、こんなに心惹かれるのか?
小川さんは、生前の鈴木正治さんと直接交流があった方で、鈴木さんの生き様を色々教えてくださった。
グローバルな世界観が普通になった昨今、だからこそローカルなものへの渇望は強い。
人間というものは、矛盾した生き物だ。
鈴木さんは、東京や海外でも評価された作家だったが、青森市にこだわって住み続けた。
よくよく聞くと、そうせざるを得ない事情があるのだが、、、。
質素を好み、作家としての欲望を一切捨てたことにより媚びがなく作品にいやらしさがない。
贅沢や派手さと言ったものとは無縁の作品群。
そう、鈴木さんの作品を見ていると、欲にまみれた自分の心が浄化されるような気がするのだ。
そして、カナダ人のフォークロア画家モード・ルイスを思い出した。
障害があるため、カナダの小さな村で一生を送り、身近な風景や動物や草花を素朴に描いたことで知られる。
彼女の作品も、見ていると浄化される。
彼女の生涯が映画化されているので、ぜひ見て欲しい。
エキサイティングな旅行に出かけるわけでもなし、面白い人たちと交流するわけでもなく、ただ、自身が好きな絵を狭い一軒家で描き続けた女性。
手の届く範囲に広がる無限の愛すべきものたち。
狭いと感じる人間の心が狭いのであって、何気ない日常に宝物たちがきらめいている。
鈴木さんの作品も、モードの作品も、声高に何かをアピールしたり、心を煽るようなことはない。
ただ、心に寄り添うように佇んでいるだけ。
だからこそ、作品がとても愛おしい。
モードの映画は、気軽に出かけられないご時世だからこそ、骨身に沁みるぐらい感動する内容です。
ちなみに、現在アマゾンプライムで見放題になってます。
「しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス」
鈴木正治の作品は、青森県内各所に展示されており、自由に鑑賞できるものも多い。
以下に少しだけ紹介したい。
※もちろん、紹介した以外にも、たくさん点在している。
▼青森県青森市
(1)青森県立郷土館
最大の支援者だったおきな屋の経営者・斎藤葵和子さんが寄贈した作品2,000点を所蔵している。
(2)青森市森林博物館
(3)青森県社会教育センター
彫刻「わ」
(4)青森市新町ニコニコ通り、アスパム通り(八甲通り)
石彫「私 地球」、大理石「金太郎」「浦島太郎」「十和田湖」他
街灯「リンゴ」「カクマキ」他
(5)青い森公園
石彫「思い出の像」
(6)働く女性の家 アコール
石彫「青森市男女参画都市宣言記念モニュメント」「ひとり」
(7)おきな屋佃店(和菓子、喫茶室)
大正7年創業の和菓子屋さん。こちらの佃店内に、石彫や木彫り、墨絵などが展示されています。こちらの経営者だった斎藤葵和子さんは、自身も歌人であり、鈴木正治さんの最大の支援者でした。鈴木さんの没後、斎藤コレクションは青森県立郷土館に寄贈され、2015年3月に大きな展示が開催されました。
そして、お店のロゴや包装紙のデザインは、鈴木さんのもの。
(8)浅虫水族館
石彫作品「遊泳の輪」。浅虫温泉のオープン記念モニュメントとして制作された。駐車場にあります。
(9)浅虫温泉 辰巳館(たつみかん)
陸奥湾を臨む素晴らしい温泉旅館です。こちらの浴衣は、鈴木正治さんのデザインです。
また、旅館HP内にあるフォトギャラリーをご覧いただければ、施設内にある数多い鈴木作品を覗き見ることができます。
なんと、鈴木正治Tシャツも販売しているそう。
▼青森県七戸町
龍泉山 青岩寺
石彫「ウゴカズ」等、20点余りの作品が境内に点在しています。
▼青森県三沢市
星野リゾート青森屋
カッパ沼周辺に、石彫「カッパ」「子供たち」「道祖神、月と日」などの作品が点在しています。
私設ギャラリー・ノースライトで観る鈴木正治
十和田市にあるギャラリー・ノースライトも、ぜひチェックして欲しい。
ギャラリーを主催する小川さんは、ご縁があり鈴木正治作品の寄贈を受けたことがきっかけで、このギャラリーを始めたそうです。
ご寄贈された方:
東京小金井にあったギャラリー・ま 的野玲子さん
おきな屋の経営者だった斎藤葵和子さん
鈴木正治さんの妹である鈴木明子さん
鈴木正治作品は、200点余り有り、見応えあります。
そのほかにも、一原有徳(いちはらありのり)、田島征三(たしませいぞう)、粟津潔(あわづきよし)等の作品を観ることができます。
十和田市現代美術館に来た際にでも立ち寄って見てはいかがだろうか。
小川さんから鈴木正治のスピリットをぜひ直接聞きながら、鈴木作品を楽しんでみて欲しい。
連絡先:小川 090-5358-6797
電話にてお問い合わせください。
一般公開はしていません。必ず少人数でお越し下さい。
私設ギャラリーのため、駐車場も2台分しかございません。ご了承下さい。
気になったけど、出かけられない方のために。
「鈴木正治の軌跡」工藤正義
鈴木正治に惚れ込み、フランスに招待して個展を開かせたピエール・バルーについて