好評を得て、シリーズ第3作目の製作を担当することになったDNPトランスアート社のカレンダー。
前作を超える事は、もはや当たり前の“課題”となる中、果たしてどのように“超える”のかを模索。
カレンダーという機能だけでなく、
もっとコミュニケーションできるツールとしての価値を高められないものか…と。
⁂『Fofofo(フォフォフォ)』イラストレーションと合わせて取り入れた『笑い声』。アルファベット表記で組んだ遊びのタイポグラフィー
カレンダーは、1年を通して生活の中に佇み、
生活する中で、毎日顔を合わせることができるツールだからです。
9.11のテロ以降、気持ちが沈んでいた世界。
その世界をどうにか、さらなる暗いニュースから解放し、
『笑い』でハネのけることができないだろうか。
⁂こちらは『GeraGera(ゲラゲラ)』パーティーグッズの“鼻メガネ”風
⁂こちらは『Ufufufufu(ウフフフ)』“少女マンガのヒロインのウルルンとした目”のように
“スマイル”(笑顔になってしまう)をテーマに製作したカレンダーです。
ミラーのように映り込む紙。
そこに映り込む顔と絵柄を重ねて遊びます。
全国カレンダー展で受賞後、その選抜作品で行われる日独交換カレンダー展においても銀賞を受賞。
日本の “笑い” のツボが、ドイツにおいても同じであることが証明されたよい機会となりました。
経済産業省商務情報政策局長賞 受賞
日独交換カレンダー展銀賞 受賞
〈追記〉:製作時の、ものすごーく為になったこと
このカレンダー製作では技術的な面でも楽しく勉強することできました。
一番の課題は “映り込み” でした
ミラー面がいかに平滑に仕上げられるか。
これが今回のコンセプトである『顔を写して楽しむ』事をほとんどをクリアできてしまいます。
そのために、いくつかの鏡面加工された紙を取り寄せて、テストをすることにしました。
最終的に絞り込んだ紙は2つでした。
・カルレアルグラス
・セイントエコ
もうひとつの課題は、時間が経つと起る、紙の “反り”
カレンダーというツールは1年間使うものなので、形状変化のないモノなど、ある程度『耐久性』を意識しなければなりません。
このカレンダーは、1枚ずつを手に取ってもらう必要があったため、『綴じ』ていないので、
余計に反りが目立ってしまうんです。
そこで、1つの作戦として、カルレアルグラスを両面に合紙させることにしました。
表面が1月、その裏面が2月という構造になります。
合紙することで反る力が両方向から引っ張り合うことになるので、平滑さを保つことができるんですね。
こういう発想は、実際に素材と向き合って、手で触ってみないと分からないことです。
ですから、デザイナーの皆さんには、頭の中だけで完結しないように、手を身体を動かすことをおススメします。
Macの前だけで完結してしまいがちですからね。
あともうひとつの課題 “目立つキズ”
印刷の段階で、印刷機の機器が少しあたるだけで、鏡面に小さな細かいキズができてしまうことがありました。
この問題を完全に解決することはできませんでしたが、印刷の担当者にできるだけ傷がつかないように配慮してもらうしかありません。
ある程度のヤレがでてしまうのは仕方がないことでした。こういった問題も実際にやってみるまで分からないことのひとつですね。
問題はたくさん起ってきますが、これらの問題をクリアしていくことも、
グラフィックデザインの面白さや魅力のひとつだと言えるのではないでしょうか。